開院した理由
札幌市内には多くの歯科医院があります。それにも関わらず、私が歯科クリニック開院し診療をつづけているのには理由があります。患者さんが、もし当院を受診するのであれば知っておいてほしいことなので、少し長くなりますが是非読んでください。
患者さんはなぜ歯医者にいくのでしょうか?それは、「歯が痛い」「歯肉が腫れている」「口の中に違和感がある」「虫歯がないか心配」など困っていることや不安なことをなんとかしたい、できればそれを治療したいと思ってのことでしょう。
歯医者はそれに応えているでしょうか?
歯医者さんのHPや案内をみると「インプラント」「ホワイトニング」「予防歯科」といった言葉が目につきます。「インプラント」は顎の骨に金属などを埋め込む一種の入れ歯で、病気の治療ではありません。「ホワイトニング」は美容であり病気の治療ではありません。
では「予防歯科」はどうでしょうか?虫歯や歯周病といった病気の治療が終了したあとに必要なものですが、治療ほど難しいものではありません。そのため虫歯や歯周病の治療以上に力いれるようなものではないでしょう。
少しめんどうですが、下の図を見てください。
この図は1975年では、40歳くらいになると歯が全部抜かれて総入れ歯になる人が現れていたのが、近年では55歳くらいから総義歯になる人が現れるようになったことを示している図です。これは歯科医療の進歩をしたといっていいでしょうか?しかし、そうであれば、総入れ歯になっていく人の割合の増え方もへっていくはずです。(グラフの傾きが、近年になるほどゆるくなってくるはずです)そうはなっていません。どういうことでしょうか?
国民皆保険制度が導入される(1961年)以前は、一般の人は歯医者に行きませんでした。行ったとしても抜かずに治療ができる歯でも抜かれることが多かったようです。しかし、保険制度が導入されてからは、だれもが歯医者にかかるようになり、つめたりかぶせたりすることができる歯は抜かれることがなくなりました。
つまり、歯がすべてなくなる年齢が上昇した理由は、あまり歯を抜かずに穴をうめるようになったからで、それも何度も直すようになったからのようです。ただ病気自体の治療がされていないので最後は歯が抜かれてしまいます。そのため歯がない人が増えるスピードは40年前とかわらないのです。
その理由は一言でいうと、「穴を埋めること」=「病気の治療」と考えてしまう歯科医師という医師とは全く別の職業がつくられてしまったことにあります。
一般に行われている歯科臨床は歯科医学とかけ離れてしまっています。しかし、幸い歯科医学自体は進歩しています。
「病気の治療をする」という視点から診療をすれば、歯が抜かれることなく、口腔を健康な状態に保つことはかなりのところまでできるはずです。当院ではそのように考え日々の診療に取り組んでいます。
院長 渡部 哲哉